ネチカ 〜野良学的秩序によって証明された〜

世間をゴロニャンと斬りまくる、ネコの哲学、だったけど最近は日記。




写真疑惑事件

2019年9月27日(金)
自宅にて雑誌のレイアウト作業。
午後に新規のイラスト作成依頼の電話が来る。とりあえず引き受ける。
夕方に妻は一旦帰宅し、それから一人で韓国へ。追いかけている韓流スターの誕生日イベントに参加するそうだ。
私はお留守番。

2019年9月28日(土)
早朝に起きて近所を散歩しようと思ったが、眠くて二度寝
引き続き自宅にて雑誌のレイアウト作業。

2019年9月29日(日)
引き続き自宅にて雑誌のレイアウト作業。
作業が捗ったので、夕方に新宿に出かけてみる。
『月がとっても青いから』という曲で有名な菅原都々子さんのアルバムを聴きながら散歩しようという計画。
菅原都々子さんのベストアルバムは大好きなのですが(特に各曲のアレンジが素晴らしく、細野さんに匹敵するぐらいだと個人的には思っています。ま、モロ演歌な曲が多いですが)、自宅で聴く以外、散歩の時は違和感がすごくて、菅原都々子さんを聴きながら歩くのにピッタリの場所はないかしらん、と。
で、思いついたのが「都会の夕方の雑踏」。
チャレンジしてみたら大正解。別の何処か、外国(アジア圏かな)の街角を歩いているような気分というか、ちょっとトリップするような感覚。
映画『AKIRA』のシーンで、近未来の東京の雑踏で大正歌謡っぽい懐メロがかかる場面があって、それが異様にマッチしていたのを覚えているのですが、そのイメージです。

2019年9月30日(月)
引き続き自宅にて雑誌のレイアウト作業。
深夜に妻が韓国から無事帰ってきました。

2019年10月1日(火)
自宅にて雑誌のレイアウト作業。
この日で全て仕上げて入稿を済ませる。

2019年10月2日(水)
平和島へアルバイト。
消費税導入前の駆け込み需要も落ち着ついてきている。それでも2時間弱の残業。

2019年10月3日(木)
平和島へアルバイト。
この日は定時で上がることが出来る。
同僚に私のイラストルポが掲載された冊子『みちのり 2019 秋号』を渡す。
この仕事でアルバイトを1ヶ月休んでしまったりするので、「こんな仕事してるんだよ〜」と皆に見せて納得してもらったりする訳です。
この日は同僚と新宿で呑むことに。
同僚の案内で新宿三丁目のイタリアンの立ち飲み。旨いし安い。今度、妻を連れていこうと思う。

2019年10月4日(金)
新規のイラスト仕事のため、取材に出かける。場所は荻窪
無事に取材を終えて、帰宅。
10月だというのに結構暑く、よく汗をかいた一日。

2019年10月5日(土)
定期検診の為、夫婦で阿佐ヶ谷へ。
病院に到着したら、検診予約日を1週間間違えていたことに気付く。あれまあ。
という訳で一日フリーに。
私は前日の取材で、お店の外観の写真が上手く撮れていなかったので、妻には阿佐ヶ谷で待っていてもらって、念のためもう一度ささっと荻窪に撮影に向かう。サクサク歩くとやはり暑くて汗をかく。
阿佐ヶ谷に戻る電車で、乗り込んだ車両のドアが故障し開かなくなる。点検のためしばらく停車するが結局直らず、駅員さんがドアに故障の張り紙をして出発。阿佐ヶ谷で妻が電車に乗り込んで合流。そのまま新宿へ向かい、この前に飲んだ新宿三丁目の立ち飲みイタリアンに行って、昼呑みとシャレ込むことに。
夫婦で散々飲み食いしてもかなり安い、そして旨い。妻にも大好評。

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立ち飲みイタリアンの残骸

その後、代田橋に移動して気になっていた立ち飲みのお店に移動。ここは味はそこそこだがかなり割高。二度と行かない。

2019年10月6日(日)
新規イラスト仕事の資料整理とラフ作業

2019年10月7日(月)
引き続き新規イラストのラフ作業。

2019年10月8日(火)
平和島へアルバイト。
同僚らの間で広報誌『みちのり 2019 秋号』の私の連載『ごちそうパレット仙台偏』のイラストは写真ではないか論争があったようだ。なので改めてチームリーダーのおっさんとその点についてしばし議論する。
ちなみに全ての会話は半笑いであります。
チームリーダーのおっさん(大将)曰く「人物は絵だとして、このハンバーグとか牛たんのタタキとかは写真をパソコンで切り抜いてパパっと仕上げたんじゃねーのか」
私「ちげーよ!ちゃんと描いてますー。ちゃんと見ろよ!」
大将「えーほんとかよ〜。パソコンでちゃちゃっと仕上げて後は遊んでるんじゃね〜のかぁ」
私「じゃあこれ見ろ、ホレ見ろ!」と、iPhoneで撮影してあった制作過程の一連の写真を見せる。

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コレガ牛たんタタキの制作過程証拠写真だ!

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そして見よ!コレガ、ハンバーグの制作過程証拠写真だ!

大将「ほんとか?これ。すげーな、今度オレの何か描いてもらうかな」
私「すげーだろ。ちなみに描いてなんかやらない」
大将「まあこれじゃぁ、1ヶ月かかるか…」
この仕事が入るとバイトを1ヶ月ほどは休まなきゃならないが、
大将としては休まれるのは困るし、私としてもバイトを1ヶ月休むのは痛いが、しょうがないのである。
大将「まあお前の夢だからしょうがないか…」
私は心の中で「夢じゃないですよ〜〜仕事ですよ〜シ・ゴ・ト」と、ツッコミを入れてます。夢などとロマンチックな話じゃないのだ。
ま、イラストの採算とれてないけど。

会話をしていて、あーやっぱりなぁと色々考えたのは「写真に見えてしまっても困るんだよなぁ」というのと、
でも「写真より魅力的に見えてないとこの連載、成立してないし」という自負があったりして、と。
大将の言葉「写真をパソコンで切り抜いてパパっと仕上げたんじゃねーの」というのは恐ろしいことにプロの編集者ですら思っているかもしれないし、そこまででなくても「写真に見えるんなら、わざわざイラストにしなくったって良いじゃん。写真で」と思われることは、ままあることだなと。

料理写真をキリヌキ処理にしてページを構成することも悪くはないかもしれません。仕上がりとしてはPOPEYEのようなカルチャーっぽい若者向けの仕上がりになると思います。
好みによりますが、私が目指しているのは「爽やかでどことなく古風な感じがするページ」なのですが、それが成功しているかどうかはわかりません。その回の出来次第といったところかと思います。
イラストの場合、注目させたい部分を描きながら直感的に選びとって、他は省略できる、特に水彩で描くメリットは描き込んだ部分とわざとイージーにサラッと描いた部分が絵の中で混在しても自然な仕上がりになるところ。
色んな意味で境界を曖昧にできるところが良かったりします。
それから仕上がりのテイストを統一出来るところ。先ほど書いた「爽やか」とか「古風」といった、曖昧なイメージでも作れてしまうのです。とはいえ「別のテイストで描いて下さい」と言われると「え、ちょっと…」となりますが。

「トレースでしょ」などと思ったりする人もいるかもしれませんが、実際はトレースの方が面倒くさいですし、トレースだと絵が小さくまとまってこぢんまりしてしまう。トレースにするぐらいだったら、写真を使った方がページとしてはましな仕上がり(先ほど書いたような)になると個人的には思います。
補足ですが世間的には所謂「トレース」した絵を蔑む傾向がありますが、私個人は仕事なんだし、自分で撮った写真をトレースして作品にするのは別に悪いことじゃないと思います。
私があまりトレースをしたがらないのは、若い頃からデザイナーをしていて、手作業の時代は「写真のアタリとり」という写真トレースと似たような作業を日々散々こなしていたというのと、『アンフラマンス/梱包されたデュシャン』という本でデュシャンの絵をひたすらトレースするという地獄の1年(約)を過ごしたことから「もうトレース作業は一生分以上目一杯しました、こりごりです」となりました。そういう事情があります。(ちなみに『アンフラマンス/梱包されたデュシャン』は本名でクレジットされてます)

現在、イラストを描く作業は写真を見ながらコピー用紙に鉛筆スケッチし、そのスケッチに直接描くのは嫌なので、というか鉛筆の線は不要なので、上からやはり白紙のコピー用紙を重ねて、下からライトボックスの光を当てて描きます。
とはいえ実際に筆で描いている時は、光が邪魔をして正確な色が見えなくなるし色を塗れば下絵の線も見えなくなるので、ライトを点けて作業をするのは物の位置関係を大雑把に把握する程度になり、またスケッチの形にこだわりすぎると、やはり画面構成が伸びやかさを欠いてしまうので、鉛筆スケッチはほんの目安程度のものだったりします(それ以外にクライアントにどのような絵を描くか事前に提出しないとならないので、鉛筆スケッチはそのラフの為に使ったりします)。
コピー用紙を使うのは、単純に経費節約のため。コピー用紙に水彩だと紙がうねっちゃって大変なのですが、画用紙を板に水張りして描くなどといったような高級なことは出来ません。

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このようにうねった紙のシワを色調節しながら丹念に消すざます

2ページで大量の絵を描く(前回は大小合わせて26カット)のでスピード勝負になり、描き損じたらすぐ破って捨てて、すぐ描き直すという繰り返し。時間が無くて描き直せない場合は、いくつかある裏技を使って修正し、それでも駄目ならパソコンで修正、という案配。それでもまあ、時間がかかります。
タブレットを使ってパソコンで描けば」という意見もあるかと思いますが、これはまあ「好きじゃない」としか言えなかったりします。パソコンで描くということは職業柄今までうんざりするほどしてきましたが、単純に向いていないというか本当に嫌いなのでしょうがない。鬱になるというかそうなりかけたこともあります。そのうちそんなことも言ってられなくなるかもしれませんが…。まだ大丈夫なうちは出来るだけ紙に水彩で、と。
パソコンで描いた他の人の絵を観る分にな嫌いじゃなかったり、「素敵だな」と思ったりするんですが。
という訳で、今のところは周囲の理解もあってスレスレ成立していますが、悪い方向に転ぶとすぐ連載終了となる、危ういページでもあります。

最後に大将が「でも、アレだよな、今回お前の名前載ってないよな」
私「そうなんですよ、編集部が載せるの忘れたんですよ、こんだけ頑張ってるのに。ひどい話ですよ」
例によって半笑いの会話です。