ネチカ 〜野良学的秩序によって証明された〜

世間をゴロニャンと斬りまくる、ネコの哲学、だったけど最近は日記。




『君たちはどう生きるか』のウソ、ホント、ウッソ〜ン。

やっぱりこれはネタバレになるかな。
以下、ネタバレあります。
映画を観た人に向けてのお話。

率直に、
私は今までの宮﨑駿にはなかった新しい表現が出てきてのけぞったのですが、
今までの宮﨑さんって、ザ巨匠として作り上げてきた、世界観を構築して凄いものを観せる人で、
どちらかといえば語り口は重厚で、悪く言えば一本調子の人だと思っていたのですが。
あの異世界というか死の世界のインコ人ですか、あのいきなり構築した世界観の中に異質なものを放り込んでくるような、
あんなことあの人するような人に思ってなかったのですが。

いきなり声色を変える。
例えば今まで文楽や歌舞伎だと思ってみていたら、落語になったみたいな。
手塚治虫で言えば真面目な進行の中に突然、ヒョウタンツギやオムカエデゴンスが出て来るみたいな。
ちょっと違うか。
まあ、ああいう異質なものをぶち込んで、落差に酔わせるみたいなアクロバチックな作劇を、
今まで宮崎アニメで見たことなかったんだけど、どうだろう?

あのインコ人の造形って、稚拙なんじゃなくて相当冒険的な試みに感じたんですが。
今まで足し算で構築していた作画方式に、引き算で作る作画方式を入れ込んで、それを違和感なく、というより違和感を感じさせたり、感じさせないようにスムーズにしたりと、行ったり来たりする。

子供の頃、ふざけて「ほんと?」「ウソ」「ええ?」「ホント」「ウソ〜ン」「ウソ」「ええ〜どっち」「ウソホント!」とかいってじゃれてるような、それを絵でやるというかアニメでやってる。
その指示を出す宮﨑さんも狂ってるけど、それを描いたアニメーターもちょっとアレなんじゃないかと。
湯浅さんのアニメが近いのかな。でもちょっと違うような。

そういえばウソホントがないまぜなのはサギに象徴して体現されてますね。

ちょっと村上春樹のカエルくんを思い出したり。

落差で言ったら『フロム・ダスク・ティルドーン』とか『マグノリア』を思い出したのですが、
ちょっと違うか。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』とかか。
それも違うか。
でも少なくとも私の中ではそれらに近い質感の映画。
指摘している人も多いですが、やはり村上春樹の小説に近いかな。
映画館で感動するのと同時に嬉しくてニヤニヤしていました。

「こんなの作れるんだ、この人」
という感想です。